その肘掛けは誰のもの
映画館の座席につけられた
肘掛けは大体足りない。
明らかに個人用のサイズではあるが、
隣の人と共用である。
先に取った者勝ちだといわれても、
腑に落ちない。
わずかな隙間に肘を乗せ、
さりげなく陣地を主張したり、
一瞬のすきを狙って、
一気に領土を占領したり。
譲り合うか、奪い合うか。
ときに映画よりもスリリングな物語が、
小さな肘掛けを巡って
繰り広げられるのである。
なにも映画館の
肘掛けに限った話ではない。
電車の座席の端っこにある、
ドア脇の仕切りは
座っている人のまくらか、
立っている人の背もたれか。
バスの座席の背もたれは、
座っている人のものだろう。
しかし、背もたれの裏の部分は、
後ろに座っている人にとっては
物置きだったり、
テーブルだったりするのだ。
それらはまるでルビンの壺のように
正解があるわけではない。
だから人は、コミュニケーションが
必要なのかもしれない。
2011年8月8日 5:22 AM | カテゴリー:ぜんぶ, 3バカ日誌 : 武井宏友 | コメント (0)