春の朝。

朝陽が桜を煌煌と染めあげながらのぼりだすと、
光に当てられた花が彩りはじめる。
花々は朝の街の静けさを楽しみ、
春の鳥は枝にとまり口ずさんでいる。
雲は虚空の果てに流れ出し、
建造物の間を風が吹き抜けて、
ぼくを酔いの彼方に連れていく。
なんて気持ちのいい朝なんだろう。
夏にも、秋にも、冬にもない、瑞々しい朝が春にはある。

春になると胸が早鐘を打ちはじめるのは、
決して冬の終わりが来たからだけではない。
こういう朝があるからだ。