夏の独唱。

九月のおわりかけに
木立からセミの鳴く声が聞こえた。
いつもは合唱で聞こえてくる鳴き声も、
このときは独唱だった。

そのひとりきりのセミは、
強く高く大きくおもいきり鳴いていた。
ひとりだけの世界を謳歌しているように。
あるいは、世界に自分しかいないことを嘆くように。

ふだんは、うるさいと思ってしまう鳴き声も、
このときばかりは切ない気持ちが湧いてきた。
夏のおわりは、いつもしんみりする。