一生のさいごに鳴き始めるセミ。

夏の盛りを示すように「ミーンミーン」と
セミのリサイタルが連日開催されている。
彼らは数々の試練や苦難を乗り越え、
その歌声を僕たちの耳に届けている。

土の中で生活しているときは、
モグラに襲われ、菌に侵される危険がある。
自分で守る力はないし、守ってくれる親もいない。
そうした恐ろしい少年少女の時代を乗り越え、
地上に出ると、こんどはアリが待ち受けている。
人間にとっては恐るに足らない虫でも、
セミにとっては恐怖の虫でしかない。
彼らの目をかいくぐり、羽化をし、
成虫しても、鳥や蜂が目を光らせている。
そして、いちばん恐ろしい人間が狙いにくる。
攻撃手段を持たない彼らは、
見逃してくれることを待つしかない。

「ミーンミーン」と鳴いているセミは、
そうした厳しい毎日を勝ち抜いてきたセミなのだ。
その鳴き声はメスへの求愛歌だと言われているが、
彼らの一生を思うと、人生の勝利の歌声にも聴こえてきます。