毎年起こる、ひと夏の恋

僕は人に好かれるほうではないですが、
虫にはよく好かれます。

あっち行けと嫌悪感をむき出しに
手をブンブン振り回して
懸命な形相で追い払っても、
人間からの愛情と勘違いしたのか、
虫は懲りずに僕との距離を縮めてきます。

手を棍棒のように振り回しても、
破局を迎えないことがわかった僕は、
ブーンブーンと虫とのランデブーが始まると
ティッシュを一枚取り出し、
潰さないように捕まえてそっと窓の外へ逃がします。

陽気な空気に包まれて、
音符マークがついて終わるような
毎日に変わっていく夏は、
いちばん好きな季節なのですが、
虫とのひと夏の恋が始まると思うと
ちょっとだけ嫌な気分に陥ります。