おじいさんの言葉

みなさんもそうだと思いますが、
ぼくも5年前の日はよく覚えています。

そのとき、商業施設の9階にいました。
揺れが発生したとき、棚に置かれていた
商品が地面に叩き落とされ、
そこかしこにガシャン!バン!という音が鳴り、
「これはやばそうだ」という空気が
フロア中に蔓延し、悲鳴もところどころから聞こえてきて、
ぼく自身も恐怖におののきそうになっているとき、
一人のおじいさんが毅然とした態度で、
「このビルは絶対に倒れないから!大丈夫だから!」と
その小さな体を目一杯使ったような大きな声で、
みんなに伝えていたら、さっきまでのざわめきが
波が引くように静まっていきました。

そのお店のスタッフでもない、そのビルの管理者でもない、
そのビルにあまり詳しくなさそうなおじいさんのひと声が、
その場にいたみんなにすこしの安堵感と平常心を与えていました。

言葉というのは「誰が言うか」も大事だったりするけれど、
あのときのあのおじいさんを思い返すたびに言葉のことを考えます。