北風と太陽とパントマイム。

朝です。日ざしの強い日です。
日傘をさしている女性が、
前から歩いてきます。

風が吹きました。わりと強めの風です。
その女性は、傘が飛ばされないように、
傘の内側の骨をにぎりしめ、ふんばりました。

すると、雨がふっているように見えたのです。
「日傘」をさしているのに、
あんなふうにふんばっている人をはじめて見たので、
奇妙な感覚をおぼえました。
こういう奇妙な感覚をあじわう体験が、わりと好きです。

あ、この女性で美人をイメージしているあなた、
ごめんなさい。ぼくが見かけたのは、
うちの母ちゃんくらいの年の人です。
いやもちろん、ぼくの母は美しいですよ。
生き方とかが。