二度と会えないからって、消えるわけじゃない。

「君は才能あると思うよ。何の才能かはわからないけど」
同じタイミングで会社とサヨナラした同期。

「君はしゃべると面倒くさくなるから黙ってたほうがいい」
卒論を担当してくれた先生。

「おれはたぶん実家で死ぬんだと思う」
進学校を卒業して地元で就職した友人。

「お兄さんはすごくハンサムだよね」
ぼくのことはハンサムだと言ってくれなかった幼馴染。

「てっちゃんもいっしょに転校しようよ」
小学校のころ転校していった同級生。

「レシートは、いらないですよね」
と勝手に客を決めつけるけど、
おつりを渡すときは必ず手を添えてくれたファミマの店員さん。

「おかえりー」
ぼくが「ただいま」と言うと、いつも返事をしてくれた祖母。

「ほしいもんあるかね?」
ぼくが風邪をひくと、3kmの山道を歩いてポテチを買いにいった祖母。

「・・・・・・」
ぼくが「ただいま」と言ってるのに、返事をしてくれない祖母。

「・・・・・・」
ぼくが「クソあつい」と言ってるのに、お墓にひきこもっている祖母。

「・・・・・・」
ぼくが線香あげてチーンしてるのに、シカトする祖母。

「・・・・・・」
自問自答自演している、ぼくの心臓の横のへんにいる祖母。

ずっと会ってなくても、
もう二度と会うことがなかったとしても、
この人たちの存在を信じている。

ぼくはアメリカに行ったことがない。
というか、日本から出たことがない。
それでも、アメリカ大陸の存在や、
アメリカの大統領や州知事の存在を信じている。
それと信じる度合いはまったくいっしょ。

ずっと会ってないけど、この人たちは確実にいる。